1.判示事項
・固定資産税評価額により価額比を用いることは、その合理性を肯定できるが、資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、その結果、固定資産税評価額と異なる評価がされた場合には、適正な鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのがより合理的となるというべきであるとされた事例。
2.事案の概要
・X社(原告)は、不動産貸付業を営む者である。 |
・X社は、平成28年8月、土地建物売買契約書により、訴外A社に対し、X社が所有する土地及び建物を合計約10億円(消費税等相当額を含む)で同時に売り渡した。 |
・契約書には、土地及び本件建物に係るそれぞれの譲渡の対価の額は記載されていなかった。 |
・X社は、原価法と収益還元法に基づき、土地及び建物の鑑定評価をおこなった。 |
・Y税務署長は、固定資産税評価額に基づき、課税期間の消費税等の更生処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をおこなった。 |
3.争点
土地及び建物の譲渡にかかる按分は、固定資産税評価額の比率か、鑑定評価額の比率か。
4.判旨
・固定資産税評価額について
消費税の課税基準の額を計算するために、一括して譲渡された土地及び建物の対価の額を按分する方法として、資産の客観的な交換価値を上回らない価額と推認される固定資産税評価額による価額比を用いることは、一般的には、その合理性を肯定し得ないものではないが、資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、その結果、固定資産税評価額と異なる評価がされ、価額比においても実質的な差異が生じた場合には、もはや固定資産税評価額による価額比を用いて按分する合理性を肯定する根拠は失われ、適正な鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのがより合理的となるというべきである。
・本件の評価額について
本件鑑定は、本件の訴訟手続において、原告の鑑定の申出により当裁判所が採用したものであり鑑定人が公正かつ中立な立場から実施したものである。その鑑定の手法については、不適切ないし不合理な点は見当たらず、鑑定の評価額は適正な鑑定に基づくものといえる。
そして、土地と本件建物との固定資産税評価額比率が55.51:44.49であるのに対し、本件鑑定評価額比率は77.30:22.70であり、建物の価額が占める割合について相当な乖離が生じており、消費税の課税基準を算出するに当たって実質的な差異が生じているものといえる。そうすると、固定資産税評価額比率による按分法を用いる合理性を肯定する根拠は失われており、鑑定評価額比率による按分法を用いることが相当であるというべきである。
【参考資料】
税務訴訟資料