無利息融資 大阪高裁昭和53年3月30日判決

1.判示事項

・親会社が子会社に対してした金銭の無利息貸付につき年六分の割合による利息相当額が法人税法上の寄付金に該当するとされた事例。

2.判例要旨

・親会社が子会社に対して無利息の約定で金銭を貸付けた場合には、貸主が借主からこれと対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けているか、あるいは、営利法人としてその供与を受けることなく無利息貸付をすることを首肯するに足る合理的な経済的目的その他の事情が存しないかぎり、当事者間の具体的関係に徴して算定される利息相当額は法人税法上の寄付金に該当すると解すべきであり、親会社子会社間に当時の定期預金の利息を考慮して三年経過後には年七分の割合による利息を支払う旨の約定が成立していた等判示の事情のもとにおいては、その利率は年六分と認めるのが相当である。

3.事案の概要

・X社(原告・被控訴人)は、訴外A社(X社が約40%株式を保有している)の親会社であり、法人税法上の同族会社である。
・昭和37年12月、X社は、A社に対し、期間を3年間に限り4,000万円を限度として無利息で融資する旨の契約を締結した。
・Y税務署長(被告・控訴人)は、無利息融資したことにつき、利息相当分を寄付金に認定し、寄付金損金不算入に対して更正処分を行った。

4.争点

・子会社に対する無利息融資による経済的利益の供与は、法人税法22条2項の役務の無償提供になるか。そして、法人税法37条の寄付金に当るかどうか。

5.判旨 一部変更 確定

①法人税法22条の趣旨

 法人税法は、各事業年度の所得を法人税の課税の対象とし(法5条)、所得の金額は「当該事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする」(法22条1項)と定めている。そして、当該事業年度の益金に算入すべきものとして、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡反は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」を挙げている(法22条2項)が、それは、私法上有効に成立した法律行為の結果として生じたものであるか否かにかかわらず、また、金銭の型態をとっているかその他の経済的利益の形をとっているかの別なく、資本等取引以外において資産の増加の原因となるべき一切の取引によって生じた収益の額を益金に算入すべきものとする趣旨と解される

 そして、資産の無償譲渡、役務の無償提供は、実質的にみた場合、資産の有償譲渡、役務の有償提供によって得た代償を無償で給付したのと同じであるところから、担税力を示すものとみて、法22条2項はこれを収益発生事由として規定したものと考えられる

②本件へのあてはめ

 営利法人が金銭(元本)を無利息の約定で他に貸付けた場合には、借主からこれと対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けているか、あるいは、他に当該営利法人がこれを受けることなく果実相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的その他の事情が存する場合でないかぎり、当該貸付がなされる場合にその当事者間で通常ありうべき利率による金銭相当額の経済的利益が借主に移転したものとして顕在化したといいうるのであり、右利率による金銭相当額の経済的利益が無償で借主に提供されたものとしてこれが当該法人の収益として認識されることになるのである。

②寄付金認定の意義

 経済的利益の無償の供与等に当たることが肯定されれば、それが法37条7項かっこ内所定のもの(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)に該当しないかぎり、それが事業と関連を有し法人の収益を生み出すのに必要な費用といえる場合であっても、寄付金性を失うことはないというべきである。

【参考資料】

高民31巻1号63頁