青色申告取消処分 取消請求事件 福岡地裁令和4年12月14日判決

1.判示事項

2事業年度連続で確定申告書を提出期限までに提出しなかった事実は、法人税法124条1項4号の承認取消事由に該当するとされた事例。

2.事案の概要

・X社(原告)は、昭和61年、各事業年度の法人税について、法人税の青色申告承認の申請をし、青色申告の承認があったものとみなされた。
・X社は、平成30年6月期の法人税確定申告書において、提出期限が同年8月31日となっていたにもかかわらず、9月18日に法人税の確定申告を行った(期限後申告)。
・さらに、令和元年6月期の法人税確定申告書において、提出期限は同年9月2日となっていたにもかかわらず、9月10日に法人税の確定申告を行った(期限後申告)。
・Y税務署長は、X社が2事業年度連続して各確定申告を提出期限までにしなかったことから、X社の令和元年6月期確定申告書がその提出期限までに提出されていないことを理由とし、法人税法127条1項4号に該当するとして、青色申告承認取消通知書を行った。
・X社は、青色申告承認取消処分の取消請求が審査請求において棄却されたため、本件訴えを提起した。

3.争点

青色申告取消処分の可否

4.判旨 棄却

・裁量権について

法人税法127条1項は、青色申告の承認を取り消すことができる旨を定めており、これを取り消すか否かについては、税務署長の裁量に委ねられているものというべきである。そうすると、青色申告の承認を取り消すものとした処分行政庁の判断につき、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合には、青色申告の承認を取り消す旨の処分は違法として取り消されるべきものとなる。

・本件へのあてはめ

 確定申告書を提出期限までに提出することは、青色申告法人の基本的義務というべきであり、2事業年度連続で確定申告書を期限内に提出しないことは、法人税法127条1項4号の違反の程度としては軽視することのできないものというべきである。 以上からすれば、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法になるとはいえない。

5.参照条文

・法人税法第127条(青色申告の承認の取消し)

青色申告の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く。)は、青色申告書以外の申告書とみなす。

一 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第一項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと 当該事業年度

二 その事業年度に係る帳簿書類について前条第二項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと 当該事業年度

三 その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること 当該事業年度

四 第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつたこと 当該申告書に係る事業年度

【参考資料】

税務訴訟資料