最高裁平成11年1月29日判決(未成年者・役員報酬事件)

1.判示事項

・未成年で就学中の取締役に対する役員報酬の支給が、同族会社の行為計算の否認規定により否認された事例。

2.判例要旨

・未成年で就学中の取締役に対する役員報酬の支給が、同族会社の行為計算の否認規定により否認されるべきものとした原審の認定、判断は、正当として是認できる。

3.事案の概要

・X社(原告会社、控訴会社、上告会社)の代表取締役であるA(原告、控訴人、上告人)には、就学中の未成年の子女、訴外B、C及びDがいる。
・B、C及びDは、X社の取締役ないし監査役として選任されており、支払った役員報酬を損金に算入して法人税の申告をした。
・Y税務署長(被告、被控訴人、被上告人)は、実質的に業務に参画することがない未成年で就学中の取締役3名に対し役員報酬を支給したことは、法人税の負担を不当に減少させたとして、法人税132条を適用し、更正及び過少申告加算税賦課決定を行った。

4.争点

未成年の就学中の子女に支払った役員報酬は、法人税法132条にいう、納税額を「不当に減少」させる結果に該当するかどうか。

5.判旨 上告棄却

①法人税法132条の趣旨

法人税法132条(同族会社の行為又は計算の否認)の規定は、内国法人である同族会社は、少数の株主又は社員によって支配され、当該会社の法人税負担を不当に減少させるような行為又は計算が行われやすいことにかんがみ、税負担の公平を維持すべく、そのような行為又は計算が行われた場合に、それを正常な行為又は計算に引き直して更正等を行う権限を税務署長に認めるものである。そして、同族会社のある行為又は計算が法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるかどうかは、それが純経済人の行為として不自然、かつ不合理な行為又は計算であって、それによって法人税の負担が減少したかどうかによって決すべきである

②本件へのあてはめ

 代表者の子供であり、役員である者に対する役員報酬の支給は、同人らの年齢、就学状況及び居住状況等に照らし、実質的に業務に参画することができないと認められるから、その金額について純経済人としては不合理、かつ不自然な行為又は計算であり、その額を損金に算入することは、控訴人会社の法人税を不当に減少させることになるものであるから法人税法132条(同族会社の行為又は計算の否認)の規定を適用して右役員報酬の損金算入を否認したことは適法である(原審判決引用)。

【参考資料】

税務訴訟資料240号407頁