租税法の文理解釈 最高裁平成22年3月2日判決(ホステス報酬源泉徴収事件)

1.判示事項

ホステス報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合においては、同法施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は、ホステスの実際の稼働日数ではなく、当該期間に含まれるすべての日数を指すものと解するのが相当であるとして、原判決を破棄し差し戻した事例。

2.判例要旨

ホステスの業務に関する報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合において、所得税法施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は、ホステスの実際の稼働日数ではなく、当該期間に含まれるすべての日数を指す。

3.事案の概要

・X(原告・被控訴人・上告人は)パブクラブを経営していた。
・Xは、ホステスに対する報酬からペナルティの額及び所得税法205条2号、所得税法施行令322条の控除額として出勤日数にかかわらず5千円に半月の日数を乗じた額を差し引いた残額に100分の10を乗じて計算した金額を源泉所得税額であるとして納付した。
・Y税務署長(被告・控訴人・被上告人)は、被上告人らが、控除額は5千円に同ホステスの出勤日数を乗じた額にとどまるとして、差額分の納税告知処分等を行った。
・Xは、その処分に対して、取消しを求めた。

4.争点

所得税法施行令322条が規定している「当該支払金額の計算期間の日数」とは、ホステスが実際に稼働した日数なのか。又は稼働日以外の日も含むすべての日数なのか。

5.判旨 上告棄却

 一般に、「期間」とは、ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続生を持った概念であると解されているから、施行令322条にいう「当該支払金額の計算期問」も、当該支払金額の計算の基礎となった期間の初目から末目までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然であり、これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない。

 租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく、原審のような解釈を採ることは、文言上困難であるのみならず、ホステス報酬に係る源泉徴収制度において基礎控除方式が採られた趣旨は、できる限り源泉所得税額に係る還付の手数を省くことにあったことが、立法担当者の説明等からうかがわれるところであり、この点からみても、原審のような解釈は採用し難い。

 そうすると、ホステス報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合においては、施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の目数」は、ホステスの実際の稼働日数ではなく、当該期間に含まれるすべての目数を指すものと解するのが相当である。

【参考資料】

民集64巻2号420頁