最高裁昭和50年2月6日判決(ゴルフ場施設利用事件)

1.判示事項

・ゴルフ場の利用に対し娯楽施設利用税を課することとした地方税法75条1項2号の規定が違憲であるとの主張が排斥された事例。

・ゴルフ場の土地建物につき固定資産税を賦課したうえゴルフ場を利用する者に対し娯楽施設利用税を賦課することと二重課税の成否。

2.判例要旨

・ゴルフ場の土地建物につき固定資産税を賦課したうえゴルフ場を利用する者に対し娯楽施設利用税を賦課しても、二重課税の問題は生じない。

3.事案の概要

・X (原告・控訴人・上告人)は訴外A社の株主であり、A社が経営するゴルフ場の会員である。
・東京都(被告・被控訴人・被上告人)は、当時の地方税法75条1 項2号等により、娯楽施設利用税(現行のゴルフ場利用税)として、Xから500円を徴収した。
・Xは、ゴルフ場の利用に対し娯楽施設利用税を課することを定める地方税法の規定は スポーツであるゴルフを間接に制限するものとして憲法13条に違反するとして出訴した。
・さらにXは、等しくスポーツでありながら、スケート、テニス、水泳等他のスポーツの施設の利用者に対しては課税せずゴルフ場の利用に対してのみ課税するのは憲法14条に違 反する旨も主張した。

4.争点

ゴルフ場の利用者に対して娯楽施設利用税(現行のゴルフ場利用税)を課することは、憲法13条及び14条に違反するのか。

5.判旨 上告棄却

①憲法13条に違反するかどうかについて

 ゴルフはスポーツであると同時に娯楽としての一面をも有し、原判決が確定した事実によれば、その愛好者は年々増加しているとはいえ、なお特定の階層、とくに高額所得者がゴルフ場の利用の中心をなしており、その利用料金も相当高額であって、ゴルフ場の利用が相当高額な消費行為であることは否定しがたいところであり、地方税法がゴルフ場の利用に対し娯楽施設利用税を課することとした趣旨も、このような娯楽性の面をも有する高額な消費行為に担税力を認めたからであると解せられる。地方税法75条1項2号は、ゴルフ自体を直接禁止制限しようとするものではないばかりでなく、もともとゴルフは前記のように高額な支出を伴うものであり、かかる支出をなしうる者に対し、ゴルフ場の利用につき、一日500円程度の娯楽施設利用税を課したからといって、ゴルフをすることが困難になるとはとうてい考えられず、右規定がスポーツをする自由を制限するものであるということはできない。したがって、右規定がスポーツをする自由を制限することを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。

②憲法14条に違反するかどうかについて

 ある施設の利用がスポーツ性の一面を有する行為であるということだけから当該施設の利用を娯楽施設利用税の課税対象となしえないものでないことは前記のとおりであって、立法上ある施設の利用を娯楽施設利用税の課税対象とするか否かは、その時代における国民生活の水準や社会通念を基礎として、当該施設の利用の普及度、その利用の奢侈性、射幸性の程度、利用料金にあらわされる担税力の有無等を総合的に判断したうえで決定されるべき問題である。ゴルフがスケート、テニス、水泳、野球等と同じく健全なスポーツとしての一面を有することは所論のとおりであるが、スケート場、テニスコート、水泳プール、野球場等の利用は普遍的、大衆的であり、利用料金も担税力を顕著にあらわすものとはいえないのに対し、ゴルフ場の利用は、前記のとおり特定の階層、とくに高額所得者がその中心をなしており、利用料金も高額であり、高額な消費行為であることは否定しがたいところである。右のごとき顕著な差異を無視して地方税法75条1項2号が租税負担の公平を欠き平等原則に違反するとする所論違憲の主張は、その前提を欠く。

【参考資料】

判例時報766号30頁