収益事業の意義 最高裁平成20年9月12日判決

1.判示事項

・宗教法人が死亡したペットの飼い主から依頼を受けて葬儀、供養等を行う事業が法人税法2条13号所定の収益事業に当たるとされた事例。

2.判例要旨

・宗教法人が死亡したペットの飼い主から依頼を受けて葬儀、供養等を行う事業が、請負業、倉庫業及び物品販売業並びにその性質上これらに付随して行われる行為の形態を有する場合において、(1)上記事業においては、依頼者は、パンフレット及びホームページに掲載された料金表等により定められた金額を当該宗教法人に支払っているものであり、これに伴う金員の移転は、当該宗教法人の提供する役務等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であること、(2)上記事業は、その目的、内容、料金の定め方、周知方法等の諸点において、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく、これらの事業と競合するものであることなど判示の事情の下では、当該宗教法人がペットの供養をするために宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても、法人税法2条13号所定の収益事業に当たる。

3.事案の概要

・X社(原告・控訴人・上告人)は、宗教法人で、境内に火葬場などを有し、死亡したペットの葬儀や納骨などを、ホームページを開設するなどして有料で行っていた。
・X社にペットの葬儀等を依頼した者であれば無料であるが、 それ以外の者は、個別墓地を利用する場合には、年間2千円の管理費のほか、1万円の継続利用料を徴収したり、納骨堂を利用する場合には、3万5千円又は5万円の永代使用料なども徴収していた。
・このような状況下で、X社は、法人税法の確定申告をしていなかった。
・Y税務署長(被告・被控訴人・被上告人)は、上記事業を収益事業とみなし更正処分を行った。

4.争点

・宗教法人のペット葬儀業は、法人税法上の収益事業に当たるかどうか。

5.判旨

➀事実認定

 前記事実関係によれば、本件ペット葬祭業においては、上告人の提供する役務等に対して料金表等により一定の金額が定められ、依頼者がその金額を支払っているものとみられる。したがって、これらに伴う金員の移転は、上告人の提供する役務等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であり、依頼者において宗教法人が行う葬儀等について宗教行為としての意味を感じて金員の支払をしていたとしても、いわゆる喜捨等の性格を有するものということはできない。また、本件ペット葬祭業は、その目的、内容、料金の定め方、周知方法等の諸点において、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく、これらの事業と競合するものといわざるを得ない。

②本件への当てはめ

前記のとおり、本件ペット葬祭業が請負業等の形態を有するものと認められることに加えて、上記のような事情を踏まえれば、宗教法人である上告人が、依頼者の要望に応じてペットの供養をするために、宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても、本件ペット葬祭業は、法人税法施行令5条1項1号、9号及び10号に規定する事業に該当し、法人税法2条13号の収益事業に当たると解するのが相当である

【参考資料】

民集228号617頁