最高裁令和5年3月6日判決

1.判示事項

・消費税法30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等にのみ要する」課税仕入れと「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する」課税仕入れとの区別

2.判例要旨

・消費税法30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等にのみ要する」課税仕入れとは、当該事業者の事業において課税資産の譲渡等にのみ対応する課税仕入れをいい、課税資産の譲渡等のみならずその他の資産の譲渡等にも対応する課税仕入れは、全て同号にいう「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する」課税仕入れに該当する。

3.事案の概要

・X社(原告・被控訴人・上告人)は、不動産業を営んでいる。
・X社は平成26年4月~29年3月までの各課税期間において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されているマンション84棟を購入した。
・X社は、売却までの期間において、一部、居住用として建物を賃貸していた。
・X社は、これに係る消費税額の全額を課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費等の確定申告をした。
・Y税務署長(被告・控訴人・被上告人)は、その全額を控除することはできないとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

4.争点

本件の購入マンションは、「課税対応課税仕入れ」、「共通対応課税仕入れ」のどちらに区分されるか。

5.判旨 棄却

➀消費税法30条1項1号

 消費税法30条1項1号は、事業者が国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨を規定する。

②個別対応方式

 そして、区分記載が必要な場合、「課税対応課税仕入れ」、「その他の資産の譲渡等」及び「共通対応課税仕入れ」の区分が明らかにされているときは、控除する課税仕入れに係る消費税額は、同条1項の規定にかかわらず、「個別対応方式」により計算した金額とする旨を規定する。

➂「課税対応課税仕入れ」と「共通対応課税仕入れ」

 上告人は、各課税期間において、事業として、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されているマンション合計84棟を購入した。そして、上告人は、転売までの間、各建物を棚卸資産として計上し、その賃料を収受した。

 課税対応課税仕入れとは、当該事業者の事業において課税資産の譲渡等にのみ対応する課税仕入れをいい、課税資産の譲渡等のみならずその他の資産の譲渡等にも対応する課税仕入れは、全て共通対応課税仕入れに該当すると解するのが相当である。

本件へのあてはめ

 前記事実関係等によれば、各課税仕入れは上告人が転売目的で本件各建物を購入したものであるが、各建物はその購入時から全部又は一部が住宅として賃貸されており、上告人は、転売までの間、その賃料を収受したというのである。そうすると、上告人の事業において、本件各課税仕入れは、課税資産の譲渡等である本件各建物の転売のみならず、その他の資産の譲渡等である本件各建物の住宅としての賃貸にも対応するものであるということができる。

 よって、本件各課税仕入れは、その上告人の事業における位置付けや上告人の意図等にかかわらず、共通対応課税仕入れに該当するというべきである。

 以上によれば、本件各課税仕入れに係る控除対象仕入税額は、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額となるというべきである。所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。

【参考資料】

裁判所HP