行為計算の否認 東京地裁平成元年4月17日判決
1.判示事項
・同族会社である不動産管理会社に対し支払った不動産管理料について、初めて同族会社の行為計算否認規定により過大部分が否認され争われた事例。
2.事案の概要
・X(原告)は自己所有のビル及び駐車場を訴外Zに賃貸した。 |
・Xは、自らが株式を100%保有し、代表取締役をつとめる訴外A社に対し、当該ビルと駐車場の管理を委託し、管理料としてXが受領すべき金額の50%をA社に支払う旨の契約を締結した。 |
・XはA社に支払った支払管理料を不動産所得の必要経費に算入していた。 |
・税務署長Yは所得税法157条の同族会社の行為計算否認規定により、当該支払管理料を否認して適正と認められる管理料に引き直して所得税の更正処分を行なった。 |
3.争点
・XがA社に支払った管理料は、不相応に高額か(行為計算否認規定により否認されるか)。
4.判旨 棄却
同族関係にない不動産管理会社に同規模程度の貸ビル又は貸駐車場の管理を委託している同業者が、当該不動産管理会社に支払った管理料の金額の賃貸料収入の金額に対する割合との比準の方法によって、通常であれば支払われるであろう標準的な管理料の金額を算出し、これと現実の支払管理料の金額とを比較検討することが、合理的な方法であるものと解すべきである。
・「経済的合理性基準」
標準的な管理料の金額と比較して、著しく過大であって、純経済人の行動としては極めて不合理であり、A社が、原告を株主とし、かつ、代表取締役とする同族会社であるからこそ、かかる行為計算を行い得たものと言わざるを得ない。
・「所得税の負担を不当に減少させる結果」となるか
行為計算を放置した場合、原告の不動産所得の金額を減尐させ、よって、原告の所得税の負担を不当に減尐させる結果となることは明らかである。
【参考資料】
裁判所HP